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2016/03/23

むらさきはなな

犬の散歩コースにある、とある家。うちの犬が14歳だから…10年以上はその道の風景の移り変わりをみてきた。

散歩道としてその道を選んだ最初の頃、その家には初老のご夫婦が住んでいて、庭には柿や金柑の木があり、どの季節にも花が咲いて、飼われているのか野良猫なのか春には産まれたばかりの子猫達がうじゃうじゃいて、犬を引っ張って行くのが大変な所だった。
そのうち、天気の良い日は猫と戯れながら、花の手入れをするおばあさんと挨拶を交わすようになった。
ある朝通りかかると、背広を着て出勤するおじいさんの背中を見送り、角を曲がってもう見えなくなっているのに深々とお辞儀をするおばあさんの姿があった。

毎日のように表へ出て、庭の手入れをしていたおばあさん。少し痩せたかな?と思っているうちに通りかかってもいらっしゃらない日が増えた。
全く会わなくなり、庭の雑草が目立ち始めた。夏は朝顔や向日葵がその中で荒れ狂ったように咲いていた。
ある日、若夫婦らしき人たちが家の周りの植木鉢を片付けていた。猫は一匹もいない。
しばらく後、庭の木々が全部刈り取られた。遮るものが何もない湿った土のまっさらな庭の向こうに人の気配のない家が見える。そっか…。何がそっかなんだか。

うちの犬も老犬になり、寒いと歩かないので冬の間はその道は歩いてなかったのだけど、桜開花宣言もされ春の陽気に誘われて久しぶりに歩いてみた。
庭いちめんに。紫色の花が咲いていた。

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コメント

妃香里さん、
なんてコメントしていいのかわかりません。
なんだか胸がギュッと締め付けられるようです。
人の世の移ろいに関係なく春はやってくるのですね。
毎日大切に生きなければいけないのですが、これがなかなか難しいのです。

投稿: かにちゃん | 2016/03/23 14:07

時間の流れの中で、出来れば変わらずにいてほしい事も、
時間とともに変化していくのが、ちょっと切なくなる事もあったりしますよね……。

愛犬ちゃんと二人でひさしぶりに通ったその庭に咲くきれいなむらさきいろのはなが、この先の時間を優しく照らす柔らかい色に見えます✨

投稿: みんみん | 2016/03/24 07:33

妃香里さん
とんちゃんと体験された「お庭物語」
今頃は嫁いだ猫さん達が「里帰り」されているかもですよ。

投稿: 横浜の牡馬 | 2016/03/25 13:02

すごい…読み進めていくうちに小説か何かを読んだ気になっていて、最後にあっこれってノンフィクションなんだぁってやっと現実に戻ってきました😳

夏の日差しやセミの鳴き声など情景まで浮かんできました🎐🌻

夏目友人帳のお話みたいに儚くて懐かしくて切なくて優しい…🌱

………私の頭の中では田舎の風景が浮かんできましたが、実際は都会の閑静な住宅街なんだろうな😊🏡✨

投稿: 南 | 2016/03/25 18:59

私も、南さんと同じように、小説を読んでいるような気持ちになりました。そっか…に込められた想いが、寂しさと優しさに包まれて、ふんわりと心に染みてきました。そのお庭で、人の手を借りずに、凛とした面持ちで咲いているむらさきの花…時の流れを受け入れつつ、それでも前を向いて歩んで行くんだよ~って、優しく語りかけてくれているようですね…✨

投稿: ジェミニ | 2016/03/27 08:49

なんともいえない余韻がある文ですね
せつないけれどやさしい
妃香里さんの文章 好きです

投稿: ねね | 2016/03/28 09:49


わあ~♡♡
綺麗ですね(^_-)-☆

 春を感じます!!
なんの花でしょうか?*

投稿: まっきー | 2016/04/03 02:28

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